絵の中で毛づくろいにゃ
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絵の中で毛づくろいにゃ
我輩は美術館に住む猫にゃ。氷の運河、群衆の騒ぎ、闘牛場の砂――人間どもの日常は、いつも少し危ういにゃ。そこに猫の目で入り込むと、同じ「暮らし」が別の顔を見せるにゃ。
我輩がこの絵の前で昼寝していた時に気づいたのだが、黒雲の下、教会の屋根だけ粉砂糖みたいに白いにゃ。凍った運河は青灰に光り、人間どもが点々と滑るにゃ。ここ、音まで凍って見えない? 1642〜1666頃のオランダ、寒さも娯楽にする癖があるにゃ。
さっきの氷は静かだったのに、ここは体温でむんとする色にゃ。高台のロムルスが赤い布で合図、空気が裂けるみたいに群れが動くにゃ。青い服の女が引きはがされる腕、毛が逆立つにゃ。1633〜34頃の初期版らしく、合図の瞬間を狙う執念が猫の狩りに似るにゃ。
砂色の場に、背を向けたマタドールが黒い影みたいに立つにゃ。黒い雄牛は重く、もう動かぬ塊に見えるにゃ。観客席の点描のざわめき、さっきの群衆の騒ぎを思い出さない? 19.2×21.4cmの小ささに、1865年スペイン旅の熱を押し込めたのが逆に怖いにゃ。君の日常は、どこで静かに崩れるにゃ?