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葛飾北斎が七十代の円熟期に手がけた『冨嶽三十六景』。1富士山を各地の日常風景の中に据えることで、山岳信仰が人々の暮らしに溶け込んでいた江戸時代の空気を、一枚の版画に封じ込めた連作です。1 ご覧ください、画面を圧倒するように広がる富士山。駿河国、現在の静岡県富士市付近からの眺望です。2北斎は日本の水性木版画ならではの透明感ある藍を重ねることで、山の高さと湿地の広がりを一枚に共存させています。3,4 そして画面手前を横切るのは、柴の束を背負った牛の列。5よく見ると、束の稜線が富士の傾斜とほぼ同じ角度を描いています。6人の営みの形が、自然の造形を静かに映し返す。北斎の遊び心が潜む仕掛けです。6 牛が背負う束の大きさは、富士の雄大さと対比されることで、人の営みのささやかさをより際立たせます。5手前の動きと背後の静、この対比こそ北斎が本シリーズで繰り返し磨いた構図の核心です。7
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