

The Coronation of Napoleon
Jacques-Louis Davidこの作品について
描かれているもの
画面中央に堂々と座るナポレオンの母レティツィアですが、実は式典を欠席していました。息子たちの不仲に抗議して欠席した彼女を、ナポレオンの命によりダヴィッドが「出席」させたのです。[1] 画家ダヴィッド自身も、観客席の最上段でスケッチを取る姿として画面の中に描き込まれています。歴史的な大事件の目撃者であり、記録者であることを自ら証明するかのような演出です。[1] 膝をつくジョゼフィーヌの姿は、当時のフランス民法典が定めた「夫への従順」を象徴しています。彼女の豪華な衣装は、当時の風刺画にも描かれたシルクの装飾まで忠実に再現されています。[1] 聖職者の中には、ナポレオンの遠征に同行したギリシャ系エジプト人の修道士ラファエルが描かれています。赤いフードと髭が特徴的な彼の存在は、帝国の国際的な広がりを暗示しています。[1]
技法と様式
ヴェルサイユ宮殿にある複製画は、ダヴィッドが亡命中に記憶を頼りに描いたものです。唯一の相違点は、ナポレオンが最も愛した妹ポーリーヌのドレスが、白からピンクに変更されている点です。[1] ダヴィッドは正確な人体描写を行うため、教皇を含む主要な登場人物を一度「全裸」でスケッチしてから、その上に豪華な衣装を描き加えました。これは当時の新古典主義の厳格な制作手法でした。[1]
背景と物語
当初、教皇ピウス7世は膝に手を置いた姿で描かれていました。しかしナポレオンが「教皇をわざわざ呼んだのは何もしないためではない」と命じ、祝福の仕草をする姿に描き直されました。[1] 下書きではナポレオンが自分の頭に冠を載せる場面でしたが、最終的に妻ジョゼフィーヌに冠を授ける場面に変更されました。これは、ナポレオンの傲慢さを和らげ、慈悲深い印象を与えるための演出です。[1] 幅約10メートル、高さ6メートルを超える巨大なキャンバスは、ルーヴル美術館でも最大級のサイズを誇ります。その圧倒的なスケールは、ナポレオンの権威を視覚的に知らしめるためのものでした。[1]
制作
この巨大な作品は、ソルボンヌ大学近くの古い礼拝堂を改造したアトリエで制作されました。あまりの大きさに、通常のスタジオでは収まりきらなかったため、特別な場所が必要だったのです。[1]