Northern River
Tom Thomsonこの作品について
描かれているもの
通常、木をひと塊の集団として描くトムソンが、本作に限っては一本一本の木に独立した形と個性を与えており、装飾的なパターンとしての美しさを追求しています。[1] 特定の場所を描いたのではなく、トロントのスタジオで過去の経験を組み合わせて描かれた「記憶の合成(アマルガム)」である可能性が、近年の研究で指摘されています。[1] 作品名は、トムソンの故郷近くに住んでいた詩人ウィリアム・ウィルフレッド・キャンベルの詩『北の川(A Northern River)』から引用されたという説があります。[1]
技法と様式
商業デザイナーとしての経験を活かし、木々の枝にアール・ヌーヴォー特有の「S字カーブ」を取り入れています。装飾的な美しさと野生の風景が融合した独特の様式です。[1] トムソンの全作品の中でも非常に珍しく、「黒」が支配的な色として使われています。これは彼の色彩感覚が、写実を超えた実験的な段階に入っていたことを示唆しています。[1] 平面的なキャンバスに木の立体感を出すため、絵具を厚く盛り上げたり、深い溝を刻んだりする彫刻的な技法が用いられており、物質的な力強さを放っています。[1]
背景と物語
1915年にカナダ国立美術館が500ドルで購入しましたが、これは当時の画家にとっての年収に相当する大金であり、彼の短いキャリアにおける最大の成功の一つでした。[1] 画家デヴィッド・ミルンは本作を絶賛し、「著名なカナダ人10人を湖に沈めてでも、トム・トムソンを救うべきだった」という、彼の早すぎる死を惜しむ過激な言葉を残しています。[1] 謙虚で自己批判的だったトムソンは、この作品を自ら「沼の写真(swamp picture)」と呼び、甥には「それほど悪くない」と、彼にしては珍しく肯定的な自己評価を伝えています。[1]
制作
この傑作は、トロントにある「スタジオ・ビルディング」の裏手に建てられた、質素な小屋(シャック)の中で描かれました。当時、彼は商業美術から独自のスタイルへと脱皮する過渡期にありました。[1]