

Mammon
George Frederic Wattsこの作品について
描かれているもの
伝統的な神の姿を「腐敗」させたような姿で描かれたマンモンは、金と真紅の豪華な衣装を纏っています。その足元では、美しくか弱い存在が無残にも踏みつぶされています。[1] マンモンの頭部にはロバの耳のような装飾があります。これは「強欲な者はミダス王のようにロバの耳を持つ」というトーマス・カーライルの風刺的な記述を視覚化したものです。[1] 画家ワッツは、マンモンが弱者を踏みつけるのは「残酷さ」ゆえではなく、単なる「無関心」のせいだと説明しました。富に目がくらみ、他者の苦痛に気づきもしない恐ろしさを描いています。[1] 神学者P・T・フォーサイスは、この不気味な『マンモン』をワッツの代表作『希望』と対比させました。どちらも信仰を失った人々が縋り付く「偽りの神」を描いていると論じたのです。[1]
背景と物語
「崇拝者に捧ぐ」という皮肉な副題が付けられ、当時のカタログでは「正当な軽蔑」と評されました。富への執着が宗教に取って代わる現代社会への、画家の激しい怒りが込められています。[1] 1904年、デイリー・エクスプレス紙はこの絵のマンモンの顔を、石油王ジョン・D・ロックフェラーの顔と並べて掲載しました。実在の大富豪を「強欲の権化」として公然と批判したのです。[1] ワッツは1884年、ニューヨークのメトロポリタン美術館で存命アーティストとして史上初となる個展を開催しました。当時、彼は世界で最も尊敬される画家の一人だったのです。[1] 1897年にテート・ギャラリーが設立された際、ワッツは非常に高く評価されていたため、彼一人の作品のためだけに専用の展示室が用意されるという破格の待遇を受けました。[1] ワッツの妻によれば、彼は「偉大な芸術とマンモン(富)は同じ席に座ることはできない」と語っていました。芸術が栄えるためには、金銭への崇拝を捨てなければならないという信念がありました。[1] 幼少期に母と兄弟を相次いで亡くしたワッツは、生涯を通じて「死」や「道徳」に執着しました。その暗い情熱が、富による社会の腐敗を描く本作のような寓意画を生み出したのです。[1]