

Abraham's Oak
Henry Ossawa Tannerこの作品について
描かれているもの
タナーが実際に目にした時の「アブラハムの樫の木」は、枯れ果てて支柱に支えられた無残な姿でしたが、彼はそれを神秘的な聖地の象徴として描き出しました。[1] 描かれているのは、アブラハムが天幕を張り、天使の訪問を受けたとされる聖なる場所であり、樫の木は神の約束の象徴としてそびえ立っています。[1] 舞台はパレスチナのヘブロン。タナーは1890年代後半に中東を旅した際の強烈な印象を、数年後のフランスでの制作に昇華させたのです。[1] 画面には月明かりの中を歩く二人の人物が描かれていますが、具体的な顔立ちは判別できず、形と色が織りなす「印象」そのものが主役となっています。[1]
技法と様式
タナーが得意とした「ノクターン(夜想曲)」の光の表現が用いられており、月明かりの下で細部をあえて排除することで、静寂と精神性を強調しています。[1] 写実主義、象徴主義、印象主義を融合させたタナー独自のスタイルにより、単なる風景画を超えた、神秘的な平和と精神性が画面から放射されています。[1]
背景と物語
タナーは生活のために作品をすぐに売却していたため、1909年の個展の際には、パトロンのアサートン・カーティスらから作品を借り集める必要がありました。[1] 1905年のシカゴでの展示時、この作品は『ヘブロン近くのアブラハムの樫』という題名で紹介され、アメリカの観客にオリエンタリズムの風を届けました。[1] この作品は写生ではなく、数年前に現地で手に入れた1枚の絵葉書と、別の画家の作品を頼りに、記憶を辿りながらフランスのスタジオで描かれました。[1] 黒人家庭を描いた作品で有名なタナーですが、実は彼の画業の大部分は、このような聖書の世界を独自の光で表現することに捧げられていました。[1]