第3章 ・ 見どころ
群衆をみつめる — 近代都市とブルジョワ風刺(見どころ)
見どころ
- シルクハットの男性とベールの女性であふれかえる群衆
- パリの劇場、おそらくオデオン座から出てくる場面
- 正装の身なりとは裏腹の、混沌とした空気
- 白と黒の平坦な面で構成された大胆な画面
書き起こし
1894年、パリ。スイス出身の画家フェリックス・ヴァロットンは、木版画という技法を単なる複製手段から芸術表現へと引き上げた革新者でした。彼の版画は、黒の大きな塊と白い面だけで世界を切り取る、鋭く平坦なスタイルが特徴です。 この作品が描くのは、劇場の出口に押し寄せる群衆です。ヴァロットンが強い関心を抱いていたテーマ、それは近代都市が人々の心理に与える影響でした。 奥に見えるアーチ型の出口から、人々が波のように溢れ出てきます。 腕を伸ばすこの紳士を見てください。正装に身を包みながらも、その姿には混沌とした空気が漂います。 縞模様のズボンという細部にまで、フォーマルな装いが徹底されています。それでも群衆の圧力の前では、個人の品格など溶けてしまう。ヴァロットンはそれを黒と白だけで語ります。 眼鏡をかけたこの顔には表情がありません。個人ではなく、群衆の一粒として描かれているのです。
出典(5)
- 1.スイス生まれの芸術家フェリックス・ヴァロットンは、パリのブルジョワジーの生活をしばしば風刺的に描いた大胆なグラフィック画像で知られていた。The Cleveland Museum of Art
- 2.画面には、シルクハットを被った男性たちやベールを被った女性たちが溢れかえるように描かれており、群衆の様子を捉えている。The Cleveland Museum of Art
- 3.登場人物たちの正装というフォーマルな装いとは対照的に、劇場から出てくる場面には混沌とした感覚が表現されている。The Cleveland Museum of Art
- 4.ヴァロットンは当時の多くの知識人と同様に、群衆の心理というテーマに対して強い関心を抱いていた。The Cleveland Museum of Art
- 5.本作は、パリのような近代都市における都市生活が、そこに住む人々にどのような影響を与えるかという点に着目している。The Cleveland Museum of Art