第2章 ・ 見どころ
大胆な構図と余白 — 日本美術に学ぶ(見どころ)
見どころ
- 前へ前へと激しく押し寄せる、群衆の塊
- 画面全体の三分の一を占める、右下隅の大胆な空白
- 逃げる途中で立ち止まり、シルクハットを掴もうとする男性
- 傘を持ってよちよちと歩く、肥満体の人物
書き起こし
1890年代のパリ。街頭では政治的な暴動が日常の風景でした。スイス出身の版画家ヴァロットンは、木版画という技法をただの複製術から芸術表現へと引き上げた人物です。 右上に押し寄せる群衆を見てください。警察に鎮圧されるデモの人々が、一塊となって画面に迫ってきます。豊かな黒と紙の白だけで、この圧倒的な運動感が生まれています。日本の浮世絵から学んだ平面的な空間と大胆な構図が、ここに生きています。 地面に転がるシルクハットに目を向けると、それを拾おうと立ち止まる男の姿が見えます。緊迫した場面にこうした滑稽さを忍ばせることで、ヴァロットンは権力への批評を鋭くも軽やかに届けます。 告発でも笑いでもある、この絶妙な距離感こそが、この作品を単なる時事的な記録以上のものにしています。
出典(5)
- 1.この作品は、日本の多色木版画に見られる平面的な空間、傾斜した遠近法、および文様の使用に触発されて制作されたものである。The Cleveland Museum of Art
- 2.ヴァロットンは、豊かな黒のインクと紙の白さのコントラストを活かすことで、群衆が押し寄せるダイナミックなイメージを作り出した。The Cleveland Museum of Art
- 3.版画の右下隅にある空白部分は、画面全体の3分の1を占めており、大胆かつ独創的な構図上のコンセプトとなっている。The Cleveland Museum of Art
- 4.作品の主題は、警察が政治デモを鎮圧する際に、前方へと激しく押し寄せる人々の塊を描いたものである。The Cleveland Museum of Art
- 5.当局から逃げ惑う群衆を描く際、滑稽な描写を加えることで、警察の暴力に対する批判的なニュアンスを和らげている。The Cleveland Museum of Art