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第5章読む

光こそ様式の核 — 明暗の魔法

影さえも光でできている——それがティエポロの魔法です。

Scherzi di Fantasia: Magician Pointing Out a Burning Head to Two Youths(1750–60)
Scherzi di Fantasia: Magician Pointing Out a Burning Head to Two Youths(1750–60)
ティエポロの絵を一枚のうちにまとめている、いちばん根っこの秘密は「」です。彼にとっては絵の飾りではなく、画面そのものを組み立てるための土台でした。若い頃は、画面を暗がりで満たす描き方——テネブリスムと呼ばれる、闇の中に人物を浮かび上がらせる技法——の影響を受けていましたが、やがて彼は、そのもので世界をつくる画家へと変わっていきます。 ここで見ていただくのは、油絵でも天井画でもなく、一枚の版画です。『燃える頭を少年たちに指し示す魔術師』は、〈スケルツィ〉と呼ばれる連作の一枚。スケルツォとは、遊び心を含んだ短い楽曲のことで、この連作もまた、思いつくままに描かれた即興の場面が並んでいます。魔術師や哲学者、老人や羊飼いたちが、廃墟や古代の彫刻のあいだで、占星術や骸骨、蛇を調べている——十八世紀のヴェネツィアの人々が魔術や迷信に心を寄せていた空気が、そのままにじみ出たような、どこか不気味な世界です。 けれどもよく見ると、画面には日が降りそそいでいるように感じられます。じつはこれは錯覚です。紙そのものの白さと、あちこちで神経質に途切れる細い線とのコントラストが、の感覚を生み出しているのです。影らしい影はほとんど描かれず、いちばん暗い場所さえの粒でできているために、画面全体が透きとおって見えるのです。 この「でできた闇」という逆説こそ、ティエポロが天井に空を開くときも、祭壇画で幻視を描くときも、変わらず頼っていた魔法でした。小さな一枚の版画の中にも、彼の様式の核が、静かに息づいています。
出題出題されやすい語重要語地名・年号・概念・技法
出典4
  1. 1.光はティエポロにとって不可欠な表現手段であり、彼の芸術スタイルの根幹をなす要素である。The Cleveland Museum of Art
  2. 2.場面全体に日光が降り注いでいるような感覚は、白い紙と神経質で途切れた線のコントラストが生み出す錯覚である。The Cleveland Museum of Art
  3. 3.影の表現は排除されており、最も暗い領域でさえ光によって構成されているため、透明感を持って描写されている。The Cleveland Museum of Art
  4. 4.版画の不気味な雰囲気は、魔術や迷信、魔女術に没頭していた18世紀のヴェネツィアの社会状況を反映している。The Cleveland Museum of Art