第5章 ・ 見どころ
名もなき人を描く — トローニーの眼差し(見どころ)
見どころ
- 鋼鉄の喉当てと、胸元に光る金の鎖
- 羽根飾りのついたベレー帽
- 目の下の肉のひだと、手入れされた髭
- 劇的な照明に浮かび上がる、老人の顔
書き起こし
この作品は「トローニー」と呼ばれる形式の絵画です。特定の人物の肖像ではなく、人間の表情や個性そのものを探求することを目的とした、いわば「性格描写の習作」です。 ご覧ください。目の下の肉のひだ、丁寧に手入れされた髭。レンブラントはこれほど細密に老いの質感を描き込みました。注文肖像画よりも安価なジャンルでありながら、彼は同等の情熱を注いだのです。 胸元に光る金の鎖は、レンブラントが実際にアトリエに所有していたと考えられており、複数の作品に繰り返し登場します。これは現実の富の象徴ではなく、画家が舞台装置として用いた「視覚的な語り口」です。 羽根飾りの帽子や風変わりな衣装もまた、劇的な効果を生み出すための演出です。描かれた老人が何者かは今も謎で、かつてはレンブラントの父とも言われましたが、近年の研究では別の人物の可能性が示唆されています。
出典(5)
- 1.本作は鋼鉄の喉当て、金の鎖、羽根飾りの付いたベレー帽を身に纏った人物を描いた「トローニー」と呼ばれる性格描写の作品である。Art Institute of Chicago
- 2.レンブラントとヤン・リーフェンスは、肖像画よりも手頃な価格で購入できる代替品として、トローニーという形式を確立した。Art Institute of Chicago
- 3.描かれた老人は伝統的に「レンブラントの父」と呼ばれてきたが、近年の研究ではライデンの救貧院の管理人であった可能性が示唆されている。Art Institute of Chicago
- 4.劇的な照明、風変わりな衣装、ダイナミックなポーズといった大胆な視覚的要素を導入することで、作品の魅力を高めている。Art Institute of Chicago
- 5.トローニーは注文による肖像画よりも安価であったが、レンブラントはそれらに対しても同等の高い技術を注ぎ込んで制作した。Art Institute of Chicago