第3章 ・ 見どころ
自分を描き続ける — 自画像と内面(見どころ)
見どころ
- 死を前にして浮かべた、自嘲めいた笑いの表情
- 画面左端の影に隠れた、醜い老婆
- 指で直接絵具を塗った跡が残る、左の眉
- パレットナイフで入れた、襟元の荒々しいハイライト
書き起こし
レンブラントが生涯で40点以上描いた自画像の中でも、これは死の数年前に描かれた最晩年の一枚です。古代ギリシャの画家ゼウクシスが「醜い老婆を描きながら笑い死にした」という伝説を、自分自身に重ねて演じているのです。 画面の左端、影の中にぼんやりと浮かぶ人物が見えますか。大きな鼻と突き出た顎を持つ「醜い老婆」です。彼女の存在こそが、この絵がゼウクシスの物語であることを示す決定的な証拠となっています。 シワだらけの肌、荒々しい筆の跡。これは当時流行していた「理想美」の古典主義への、意図的な反抗です。1656年に破産し、晩年まで逆境を生きたレンブラントは、美化を一切拒み、人間のありのままの姿をそのまま突きつけました。 頭に被るこの白い帽子は、遺産目録に記録された麻の帽子と同じものと考えられています。高貴な身分の象徴ではなく、一介の職人としての自分を誇りをもって示す、静かな自己表明です。 死を前にして笑う。その逆説の中に、レンブラントは人間の真実を刻みました。
出典(5)
- 1.生涯で40点以上の自画像を残したレンブラントですが、本作はその最晩年の1枚。死の数年前に「笑い死に」を演じるという、逆説的でスキャンダラスな死生観が表現されています。Wikipedia
- 2.古代ギリシャの画家ゼウクシスが「醜い老婆を描きながら笑い死にした」という奇妙な伝説を、晩年のレンブラントが自画像として再現。死を目前にした自嘲的なユーモアが漂います。Wikipedia
- 3.当時流行していた「理想美」を追求する古典主義への反抗として、あえてシワだらけの肌や荒々しい筆致を強調。美化を拒み、人間のありのままの醜さと生命力を突きつけました。Wikipedia
- 4.筆だけでなく、左眉の一部には「指」を使って直接絵具を塗った跡が残っています。完璧な描写よりも、感情の勢いや質感を優先したレンブラントの実験的な姿勢が伺えます。Wikipedia
- 5.X線調査により、当初は筆を持つ手が描かれていたことが判明。完成版ではあえて道具を隠し、制作の動作よりも「笑い」という感情の表出そのものに焦点を絞ったことがわかります。Wikipedia