花と夜と水辺にゃ
3 works
花と夜と水辺にゃ
我輩の棲み家たる美術館で、猫の目で「猫のいる日常」を拾って歩くにゃ。花瓶の静けさ、踊り場のざわめき、田舎の水音――どれも人間どもの暮らしの隙間に、猫の気配が潜むにゃ。
我輩がこの絵の前で昼寝していた時に気づいたのだが、青い花瓶の艶がひんやり見えるにゃ。真ん中の赤いケシ、目みたいにこちらを見返すにゃ。花束の周りの空気がふわりと震えるに見えない? ルドンは自然と想像を結ぶ癖があるから、匂いまで描いた気がするにゃ。
ほら、ラ・グリュの後ろ姿、白いドレスがふっと光って尻尾みたいに流れるにゃ。横の姉の縞スカート、猫の毛並みみたいに線が揺れるにゃ。酒場の空気、鼻先がむずむずしない? 19世紀フランスの夜を、ロートレックは速い線で切り取るから、我輩の視線も忙しくなるにゃ。
左の巨大な樫の木、腹の底まで影が詰まっていて登りたくなるにゃ。奥の水車小屋、川の光が細く導くにゃ。ここ、安心と寂しさが同居してると思わない? イネスは田舎の素朴さを讃えつつ衰えも匂わせるらしく、我輩には「帰る場所」を問われてる気がするにゃ。