

The Triumph of Cleopatra
William Ettyこの作品について
描かれているもの
当時の英国絵画としては極めて珍しく、女王の侍従として肌の色の異なる人々が対等な扱いで描かれています。これはエッティの肌の質感表現への強いこだわりを反映しています。[1] 古代エジプトの光景ですが、群衆の中にはエッティがロンドンの街角でスケッチした「赤ん坊を抱き上げる母親」など、当時の日常的な人々の姿が紛れ込んでいます。[1] シェイクスピアの劇を再現し、船尾は金、帆は紫、櫂は銀で作られ、笛や竪琴の音色に合わせて漕ぎ進むという、五感を刺激する豪華絢爛な演出が施されています。[1] 画面は意図的に「窮屈で混雑」した構成になっており、人物たちの比率もあえてバラバラに描かれています。この過剰な密度が、女王到着の熱気と混乱を視覚的に強調しています。[1]
技法と様式
エッティは「肉体の質感」を描く天才と称されました。本作でも、裸体の表現と道徳的なメッセージを融合させるという、彼独自の際どいスタイルが確立されています。[1]
背景と物語
ロイヤル・アカデミーで落選を繰り返していたエッティですが、本作の発表翌日には「目が覚めると有名になっていた」と語るほど、一夜にしてスターダムにのし上がりました。[1] アカデミーの学生時代は全てのコンクールで落選し、提出作も拒絶され続けた「万年落選者」だったエッティ。本作はその屈辱を晴らし、彼を時代の寵児へと押し上げました。[1] 12歳から7年間、印刷工の見習いとして働いていたエッティは、わずかなパステルだけを手にロンドンへ向かいました。苦労人の彼が巨匠を目指して掴んだ、大逆転の成功作です。[1] 前作が約30ポンドで売れたのに対し、本作はその約7倍、現在の価値で約300万円以上に相当する200ギニーという破格の報酬で、熱心なコレクターから依頼されました。[1] 歴史的な場面に「空飛ぶキューピッド」を描き込んだことは、当時の批評家から「不適切な空想」として非難を浴びるなど、スキャンダラスな注目も集めました。[1]