

The Golden Fleece
Tom Robertsこの作品について
描かれているもの
当初は『ニューステッドでの羊刈り』という題名でしたが、羊毛産業を神格化するため、ギリシャ神話の「金羊毛」にちなんで改名されました。労働者を神話の英雄になぞらえ、オーストラリアの誇りを表現しています。[1] 画面左端でスーツを着て立っているのは、牧場主のダンカン・アンダーソンです。実は、この作品にギリシャ神話由来の「金羊毛」という壮大なタイトルを提案したのは、モデルも務めたこのアンダーソン本人でした。[1] 描かれた16人の羊刈り職人たちは、実在の従業員がモデルです。地元の家族や住民によってその多くが実名で特定されており、単なる労働者の群像ではなく、当時の人々の生きた記録としての側面も持っています。[1]
背景と物語
前作『羊の雄を刈る』が公立美術館に購入を拒否された悔しさから、ロバーツはシドニーへ移住し、本作を制作しました。その執念が実り、完成した年にニュー・サウス・ウェールズ州立美術館への売却に成功しました。[1] 描かれているのは当時すでに時代遅れになりつつあった「手作業のハサミ」による羊刈りです。1880年代後半には機械化が進んでいましたが、ロバーツはあえて伝統的な手法を描くことで労働の崇高さを強調しました。[1] 1895年、シドニー・モーニング・ヘラルド紙によって「今年の最高傑作(picture of the year)」に選ばれました。現在ではオーストラリア美術の至宝と見なされる本作は、当時から圧倒的な評価を得ていました。[1] 額縁は、19世紀メルボルンの著名な彫刻家ジョン・サローンによる特注品です。2010年に修復されたこの豪華な額縁は、労働を描いた素朴な主題を、美術館に飾るべき「芸術」へと格上げする役割を果たしています。[1] 当時のオーストラリアは、羊毛産業が国の繁栄を支えていたことから「金羊毛の地」と呼ばれていました。この作品は、まさに「羊の背中に乗って」発展した国家のアイデンティティを象徴するアイコンとなりました。[1]
制作
ロバーツは牧舎の中に4ヶ月間滞在し、実際の労働環境の中で「戸外制作(プレネール)」を行いました。羊毛の山に座り、羊の脂の臭いや埃が漂う現場の空気感そのものをキャンバスに写し取ったのです。[1]