

The Fighting Temeraire
J. M. W. Turnerこの作品について
描かれているもの
実際には解体前の戦艦に帆柱や索具は残っていませんでしたが、ターナーはあえて幽霊のような白い帆柱を描き込み、かつての英雄としての威厳を強調しました。[1] 巨大で優美な白い戦艦と、小さく黒い煙を吐く蒸気船の対比は、帆船の黄金時代が終わり、産業革命という新しい時代へ移り変わる切なさを象徴しています。[1] 実際には2隻の蒸気船が巨大な戦艦を曳航していましたが、ターナーは新旧の対比をより鮮明にするために、あえて1隻の蒸気船だけを強調して描きました。[1] 空には沈みゆく太陽だけでなく、かすかな三日月も描かれています。これは英雄的な帆船時代の終わりと、産業革命という新しい時代の幕開けを同時に表現しているのです。[1]
背景と物語
トラファルガー海戦の英雄である戦艦テメレール号ですが、この絵が描かれた時は、ただのスクラップとして解体場へ運ばれるという、あまりに寂しい最期を迎える場面でした。[1] 2005年のBBCの調査で「英国で最も愛されている絵画」に選ばれ、2020年からはターナーの自画像と共に、イギリスの20ポンド紙幣のデザインにも採用されています。[1] ターナーは作品を国に遺贈するつもりでしたが、遺言書が不明瞭だったため、親族との間で5年間に及ぶ法廷闘争が繰り広げられ、ようやくナショナル・ギャラリーに収蔵されました。[1] ターナーはこの作品を「愛娘(ダーリン)」と呼び、白紙小切手での購入提案すら拒絶しました。彼は金銭よりも、この傑作を国家の遺産として残すことを選んだのです。[1] 画面では夕日が描かれていますが、地理的には船は東に向かっており、実際には夕日は背後に沈むはずでした。ターナーは正確さよりも「時代の終焉」という象徴を優先したのです。[1] 乗組員たちの間では「生意気な(ソーシー)」という愛称で親しまれていましたが、ターナーは愛国心を煽るために、より英雄的な「戦う(ファイティング)」という言葉を冠しました。[1]