

The Derby Day
William Powell Frithこの作品について
描かれているもの
画面左側では、時計やシャツのボタンまで賭け事で失い、空っぽのポケットに手を入れて呆然と立ち尽くす紳士の姿が描かれています。祭典の裏に潜む破滅の瞬間を鋭く捉えています。[1] 画面中央の少年アクロバットは、演技中にもかかわらず豪華なピクニックの食事に目を奪われています。華やかな社交界の裏にある、貧しい子供の切実な空腹という対比が描かれています。[1] 画面には当時の階級社会を反映した約100種類もの異なる「社会的タイプ」が描き分けられています。人相学に基づき、顔立ちだけでその人物の職業や品格が判別できるように設計されています。[1] 画面の両端には、高級娼婦と愛人が対照的に配置されています。当時のロンドン社会の道徳的な矛盾や、競馬場という場所が持つ「無秩序な祝祭」の性質を象徴するスキャンダラスな演出です。[1]
技法と様式
制作には実物のモデルだけでなく、当時最新の技術だった写真も活用されました。写真家ロバート・ハウレットに依頼し、競馬場に集まる群衆の姿を撮影させて構図の参考にしました。[1]
背景と物語
1858年のロイヤル・アカデミー展で、あまりの群衆の多さに作品を保護するための防護柵が設置されました。これは同展の歴史上、わずか2例目の異例の事態でした。[1] 制作費1,500ポンドに加え、複製画の販売権をさらに1,500ポンドで売却し、合計3,000ポンドという破格の報酬を得ました。これは現代の価値で数千万円に相当します。[1] 画家フリス自身も取材中に詐欺師に騙されそうになりました。友人が止めに入ると、聖職者の格好をした仲間に「頭をぶち抜くぞ」と脅されるという、絵画さながらの騒動を経験しています。[1] モデルを務めたアクロバットの少年は、フリスの家の水洗トイレに大感動。「マホガニー製で陶器の洗面台がある美しい場所だ!」と父親に報告したという微笑ましい逸話が残っています。[1] モデルの少年は、ポーズをとるのが「宙返りをすること」だと思い込んでおり、アトリエに並んだ石膏像や布地の山の中で、隙あらば何度も宙返りを繰り返してフリスを困らせたといいます。[1]