The Dawn of Love
William Ettyこの作品について
描かれているもの
作品の着想源はジョン・ミルトンの仮面劇『コーマス』です。「夜に眠りなど必要か?ヴィーナスは今目覚め、愛を呼び起こす」という一節を、官能的なヴィーナスと眠れる愛の神の姿で表現しました。[1] ヴィーナスが愛の神を起こす方法は、キスではなく「羽を撫でる」という独特なものです。この描写は一部の批評家から「絶妙に想像され、実行されている」と、数少ない称賛のポイントとして挙げられました。[1]
技法と様式
エッティは「肌の質感を描く天才」と称されていましたが、本作のヴィーナスはあえて現実離れした色彩で描かれました。当時の批評家にはそれが理解されず「チョークのようで不自然だ」と批判の的となりました。[1]
背景と物語
1828年の初公開時、あまりの官能性に「公衆の目に触れるにはあまりに甘美すぎる」と非難を浴びました。1899年の展示でも「わいせつだ」と苦情が寄せられるなど、長年スキャンダラスな存在であり続けました。[1] エッティはイギリス人として初めて裸体画を専門とした画家です。パン屋の息子として生まれ、長年の落選を経て成功を掴みましたが、彼の描く女性の裸体は常に「不道徳だ」という世論の攻撃にさらされていました。[1] 批評家からは酷評の嵐で、ある記者はエッティの描く肉体を「締まりがない」と切り捨て、本作を「締まりのないルーベンスの模倣品(doughy Rubenses)」という屈辱的な言葉で呼びました。[1] 1849年に開催されたエッティの主要な回顧展では、133点もの作品が展示されたにもかかわらず、本作はそのリストから外されました。あまりの不評から、当時は代表作とはみなされなかったのです。[1] エッティは裸体画を多く描きましたが、肉体的な親密さを描くことは稀でした。本作のようにヴィーナスが愛の神の羽を撫でて起こすという親密な描写は、彼の全作品の中でも極めて異例で謎めいたものです。[1] 本作は鑑賞者に「道徳的な罠」を仕掛けています。暗闇の中で欲望に身を任せることの是非を問い、誘惑に負けずに理性を保てるかを試すという、ミルトンの詩劇のテーマを絵画で再現しようとしたのです。[1]