

Nasturtiums
E. Phillips Foxこの作品について
描かれているもの
フォックスは、モーブ色と黒の配色を、まるで静物画のモチーフを並べるように慎重に配置しました。これはホイッスラーの有名な「アレンジメント」の概念に影響を受けたものです。[1]
技法と様式
絵に漂う独特の落ち着いた光は、当時のパリの悪天候によるものです。友人の画家ルパート・バニーは、非常に寒く湿った夏が、フォックスの色彩からいつもの暖かさを奪ったと証言しています。[1] 遠近感を抑えた平面的で装飾的な構成には、当時流行していたジャポニスム(日本美術)の影響が色濃く現れています。ドレスの水玉や椅子の網目模様が、画面にリズムを与えています。[1]
背景と物語
2011年のオークションにて、この作品は60万オーストラリアドル(当時のレートで約5000万円以上)で落札されました。これは個人のコレクションから公共の場へと移った歴史的な瞬間でした。[1] この作品は、モデルのエディスとその家族(ボイド家)によって、制作から約100年もの間、門外不出の家宝として大切に受け継がれてきました。2011年に初めて公立美術館の所有となりました。[1] 2011年、この絵はシドニーの画家マーガレット・オリーの追悼記念として購入されました。彼女が生前最も愛した画家の一人がフォックスであり、彼女の美学を体現する作品として選ばれたのです。[1] 作者のフォックスは、この絵のモデルであるエディスを、隣のスタジオにいた画家ペンレイ・ボイドに紹介しました。二人はこの絵が描かれた直後の1912年10月に結婚し、芸術家一族の祖となりました。[1] モデルの名前ではなく「ナスタチウム(金蓮花)」という花の名を題名にしたのは、肖像画としての価値よりも、色の配置や装飾性といった純粋な芸術的要素を強調しようとした作者の意図があります。[1] この絵が描かれた1912年は、フォックスの創造性が絶頂に達した時期でした。しかし、そのわずか3年後の1915年、彼は49歳の若さでこの世を去っています。[1] 当時、屋外で読書をする女性は「典型的で優雅な女性像」として描かれました。対照的に、男性の読書シーンは、専門書に囲まれた「知的で多忙な職業人」として屋内で描かれるのが一般的でした。[1]