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画家ヴィジェ=ルブランは、幼くして父を失いながらも巨匠の作品を模写して腕を磨き、王妃マリー・アントワネットの公式画家へと上り詰めた女性です。1,2本作が描かれた1783年は、フランス革命の数年前。宮廷文化が最後の輝きを放つ時代でした。3 この絵には、ある「描き直し」の経緯があります。直前に発表した作品が「王妃を下着姿で描いた」と激しく批判されたため、威厳を保つ公的な肖像として急遽制作されたのです。4 豪華なシルクのドレスには、もう一つの意図が込められています。批判の的となった輸入綿ではなく、リヨンの絹織物産業を支えるフランス製の生地を選ぶことで、王室の経済的な姿勢を示したのです。5 王妃が手にするバラは、小トリアノン宮殿で自ら育てるほど愛した花。自然への親しみという啓蒙主義的な感性を、さりげなく画面に宿しています。6 その表情に目を向けると、ロココの華やかさと古典的な端正さが静かに同居しています。革命前夜、絶対王政が放った最後の輝きが、この一枚に凝縮されています。7