

冨嶽三十六景 遠江山中
葛飾北斎この一枚を聴く
この作品について
描かれているもの
画面中央を斜めに貫く巨大な角材と、それを支える支柱が作り出す幾何学的な構図が最大の特徴で、北斎の大胆な造形感覚が遺憾なく発揮されています。[1] 巨大な角材を上下で挽く木挽や、鋸の目立てをする職人、焚き火をする少年、赤子を背負う母親など、山中での労働と生活の様子が生き生きと描かれています。[1] 支柱が作る三角形の隙間から遠くの富士山を覗かせる「枠取り」の技法が用いられており、近景の力強い労働の動感と、遠景の静寂な富士を対比させています。[1]
技法と様式
焚き火から立ち上る煙の描写には、当時の浮世絵としては珍しい洋画的な陰影表現が試みられており、北斎の飽くなき技法への探究心が示されています。[1]
背景と物語
葛飾北斎の代表作『冨嶽三十六景』全46図のうちの一図であり、北斎が70代に入り、風景画において円熟した技量を見せていた時期の傑作シリーズに含まれます。[1] 落款には「前北斎為一笔(ぜんほくさいいいつひつ)」とあり、北斎が「為一」と号していた時期の、風景画における一つの到達点を示す作品です。[1] 遠江(現在の静岡県西部)の名を冠していますが、特定の風景描写よりも、図形的な面白さや構成美を追求した抽象度の高い作品と評価されています。[1] 描かれた職人たちのポーズや造形には、鍬形蕙斎の『近世職人尽絵詞』からの影響が指摘されており、北斎が先行作品を研究し自らの表現に取り入れた跡が見えます。[1]
この絵に描かれているもの
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