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この作品は、葛飾北斎が70代に入り円熟の境地にあった時期に生まれた『冨嶽三十六景』の一図です。1 北斎がこの絵で仕掛けたのは、大胆な「枠」の発明です。画面を斜めに貫く巨大な角材と支柱が幾何学的な三角形を生み出し、その隙間に富士山を覗かせる構図は、近景の力強い労働と遠景の静寂を一枚の画面で対比させています。2,3 その三角形の奥に静かに浮かぶ富士をご覧ください。遠江という地名を冠しながらも、北斎が本当に追求したのは特定の名所の再現ではなく、図形的な構成美そのものでした。4 材木の上で鋸を引く職人の姿には、北斎が先行する職人図を研究し、自らの造形へと昇華させた跡が読み取れます。5 落款には「為一」の号が記されており、この作品が北斎の風景画における一つの到達点であることを示しています。6構図の革新と人間の営みへの眼差し、その両方が凝縮された一図です。
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