Fortune-Teller with Soldiers
Valentin de Boulogneこの作品について
描かれているもの
騙し合いの連鎖を描いた作品です。男が占い師の鶏を盗もうとする一方で、背後では少女がその男の財布を盗んでいます。「騙す者が騙される」という、当時のローマの不穏な日常を皮肉たっぷりに表現しています。[1] 登場人物が囲むテーブルをよく見ると、古代ローマの遺跡から剥ぎ取られた大理石の断片であることがわかります。碑文が刻まれたこの石材は、かつての栄光が酒場の備品に成り下がった、ローマの退廃を象徴しています。[1] 画面左端の男が占い師から盗もうとしているのは、なんと「生きた鶏」です。金品だけでなく家畜までもが盗みの対象となる、当時のローマの酒場における生々しくも滑稽な犯罪の瞬間を切り取っています。[1] 描かれた占い師は「ジンガラ」と呼ばれ、当時のローマで大流行していました。彼女たちは未来を予言する能力を持つとされる一方で、客を惑わして財布を盗む「泥棒」の代名詞としても恐れられていました。[1]
技法と様式
生身のモデルを配置して描く手法ゆえの「混乱」が見られます。重なり合う手足があまりに複雑で、どの手が誰のものか判別が難しくなっているのです。これは、光やモデルの動きを追う際の写実主義特有の苦労の跡です。[1]
背景と物語
長らく巨匠カラヴァッジョの真作だと信じられていました。1772年の競売でもカラヴァッジョの名で高値で落札されましたが、19世紀になってようやく、追随者であるヴァランタン・ド・ブーローニュの筆だと判明しました。[1] この作品はかつてイギリスのラトランド公爵家が所有し、ベルヴォア城に飾られていました。150ギニーという高値で取引された記録もあり、作者の名前が二転三転しながらも、常にその芸術的価値は高く評価されてきました。[1] 縦1.5メートル、横2.4メートルを超える巨大なキャンバスに描かれています。当時の風俗画としては異例の大きさで、酒場の泥棒や占い師といった卑近な主題を、歴史画のような圧倒的なスケールで描き出しました。[1] 1620年頃のローマは、酔っ払い、剣劇、殺人が日常茶飯事の危険な街でした。この絵は単なる占いシーンではなく、酒場や売春宿と隣り合わせだった当時の都市の「闇」と「不道徳」を凝縮した記録でもあります。[1]