

Charles I Insulted by Cromwell's Soldiers
Paul Delarocheこの作品について
描かれているもの
処刑直前のチャールズ1世が兵士に煙草の煙を吹きかけられ侮辱される場面ですが、王はキリストのように超然とした態度を保っています。この宗教的な対比が、作品に強い精神的な緊張感を与えています。[1] 画面の中で、勝利した兵士たちが敗北した王を嘲笑う様子は、聖書における「キリストへの嘲弄」の構図を意図的に踏襲しており、王権の神聖さとその没落をドラマチックに演出しています。[1] 2009年に再発見され初めて広げられた際、キャンバスの裂け目からは1941年の爆発当時の漆喰の破片や埃がそのままこぼれ落ち、当時の惨劇を生々しく物語っていました。[1]
背景と物語
空襲後、修復不能と見なされ「失われた作品」とされていましたが、実はスコットランドの邸宅で丸められたまま68年間も忘れ去られており、2009年に奇跡的に再発見されました。[1] 1941年のロンドン空襲で、保管場所のすぐ近くにドイツ軍の爆弾が落下。爆発の衝撃でキャンバスには200箇所もの裂け目ができ、破片や瓦礫の粉塵が突き刺さるという壊滅的な被害を受けました。[1] 縦約4メートル、横約3メートルという巨大なキャンバスに描かれたこの大作は、19世紀当時、ドラローシュの最高傑作の一つとしてロンドンで絶大な人気を博していました。[1] 2010年の再展示では、あえて完全な修復を行わず、空襲による「破片の傷跡」が見える状態で公開され、作品が辿った数奇な運命を観客に印象付けました。[1] 長年「焼失した」と美術史から消えていたこの絵は、現在も委託主の子孫であるサザーランド公爵家が所有しており、数世代にわたる一族の歴史とともに守り続けられてきました。[1] フランス人のドラローシュが英国王の悲劇を描いたのは、当時まだ生々しすぎたフランス革命やルイ16世の処刑という自国のタブーを、他国の歴史を借りて表現するためでした。[1] 本作の再発見は、同じドラローシュの代表作『レディ・ジェーン・グレイの処刑』が洪水で失われたと思われ、後に丸められた状態で発見されたエピソードと奇妙な一致を見せています。[1]