Archduke Leopold Wilhelm in his Gallery in Brussels (IV)
David Teniers the Youngerこの作品について
描かれているもの
画面左のテーブルの脚は、名高い彫刻家アドリアーン・デ・フリースによる『ガニュメデス』像です。絵画だけでなく、彫刻や工芸品も含めた総合的な美の殿堂であったことを示しています。[1] 大公レオポルト・ヴィルヘルムは、床に置かれた名画を杖で指し示しています。これは単なる鑑賞ではなく、所有者としての絶対的な支配権と、審美眼に対する自信を象徴するポーズです。[1]
技法と様式
テニールスは図録出版のために、まず自ら全ての絵画の「縮小模写」を作成しました。この徹底したドキュメンテーションの手法が、後の近代的な美術史研究の基礎となりました。[1]
背景と物語
世界初の挿絵入り美術カタログ『テアトルム・ピクトリウム』制作プロジェクトの一環。12人の彫版師を動員し、大公の膨大なコレクションを世に知らしめるための壮大な広報手段でした。[1] 作者テニールスは、金の鎖と剣を身につけた姿で自らを描き込みました。これは大公の宮廷画家兼ギャラリー館長としての高い地位と名誉を視覚的に誇示するスキャンダラスな自己主張です。[1] 描かれた名画の多くは現在ウィーンの美術史美術館にありますが、この「ギャラリー画」自体はドイツのシュライスハイム宮殿にあるという、コレクションの離散を象徴する状況にあります。[1] 作中の『三人の哲学者』などは左右反転して描かれています。これは原本がウィーンへ去った後、作者が手元の縮小模写を元に制作したためと考えられ、制作の裏舞台を物語っています。[1] 大公が所有した1300〜1400点もの膨大なコレクションから、特に価値の高い243点だけを厳選してカタログ化するという、当時としては空前の規模のキュレーションが行われました。[1] 扉の上にはスペイン王フェリペ4世、右奥にはスウェーデン女王クリスティーナの胸像が配置され、大公が持つ欧州最高峰の政治的・芸術的人脈が画面の隅々にまで散りばめられています。[1]
制作
この絵が完成した頃、コレクションは既にブリュッセルを離れウィーンへ移送されていました。つまり、この豪華な空間は記憶と記録を元に再構成された「存在しない理想の画廊」なのです。[1]