

Actors of the Comedie-Francaise
Jean-Antoine Watteauこの作品について
描かれているもの
300年もの間、この絵が演劇の一場面か実在の肖像画かは謎でした。近年の研究で、劇作家ダンクールの『三人の従姉妹』を演じるコメディ・フランセーズの役者たちを描いた集団肖像画であると結論づけられました。[1] ワトーの代名詞である「雅な宴(フェート・ギャラント)」には珍しく、背景に風景が描かれていません。暗闇の中に5人の人物が半身で浮かび上がる構成は、ヴェネツィア派やル・ナン兄弟の影響を強く受けています。[1] 少女の肩越しに顔を覗かせているのは、イタリア喜劇のキャラクター「メゼタン」の衣装を着た青年です。ワトーは現実の役者と演劇的な役柄を巧みに融合させ、虚構と現実の境界を曖昧にしました。[1] 画面中央には、緑の縞模様の服を着た黒人の少年が描かれています。当時、有色人種の若者を作品に登場させることはワトーのこだわりであり、巨匠ヴェロネーゼの作品からの影響が色濃く反映されています。[1] 右端の老人は、ワトーが初期の素描から繰り返し用いたお気に入りのモチーフです。髑髏帽を被り杖をつく姿は、他の代表作『村の婚約』などにも登場し、作品に演劇的な深みを与えています。[1]
技法と様式
この作品はキャンバスではなく、梨の木の板に描かれています。木材の滑らかな表面が、ロココ特有の繊細な筆致と、役者たちが纏う衣装の艶やかな質感を際立たせています。[1] 1970年代のX線調査により、左側の女性の姿が制作途中で大幅に変更されたことが判明しました。当初は帽子を被っておらず、手に持つ黒いマスクも、元々は手すりの上に置かれる予定だったことが分かっています。[1]
背景と物語
1772年、ロシアの女帝エカチェリーナ2世がパリの著名なクロザ・コレクションからこの作品を買い取りました。以来、ロシア帝室の所有を経て、現在はサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に展示されています。[1] 緻密な描写がなされていますが、実は縦20センチ、横25センチほどしかない非常に小さな作品です。梨の木のパネルに描かれており、その小ささが宝石のような親密な鑑賞体験を生み出しています。[1] 『コケット(色女)』という別名は、ワトー自身が付けたものではありません。1730年代に版画として出版された際、添えられた匿名の詩の一節「見るための色女たち」からその名で呼ばれるようになりました。[1]