

この連作は、オルガン奏者やリュート奏者が全裸のヴィーナスを横目に演奏する、官能的で奇妙な構図が特徴です。奏者の楽器や、傍らにいるのがキューピッドか犬かといった細部が、各バージョンで異なります。[1] ウフィツィ美術館にあるバージョンには、なぜか奏者が一人も描かれていません。その代わりに、ベッドの足元にいる白黒の犬が、手すりに止まったシャコ(鳥)をじっと見つめるという、独自の構図になっています。[1] 奏者は腰に剣や短剣を帯びており、神話の世界の住人ではなく、16世紀当時の現実の貴族や紳士であることを強調しています。この世俗的な要素が、女神の裸体との奇妙な対比を生んでいます。[1]
描かれたオルガンは、専門家から「パイプが短すぎて、もし音が鳴ったとしても不格好で鈍い音しか出ない」と酷評されています。ティツィアーノは音楽的正確さよりも、視覚的な装飾性を優先したようです。[1] 美術史家ケネス・クラークは、修復によって繊細な質感が失われた結果、裸体が「露骨で非情なほど直接的」になり、もはや官能的(アフロディジアック)ではなくなってしまったと辛辣な評価を下しています。[1]
この連作の最初期の記録は、神聖ローマ皇帝カール5世のために描かれたものです。皇帝は1548年にアウクスブルクでこの作品を受け取り、後に自身の有力な大臣であるグランヴェル枢機卿に贈りました。[1] ティツィアーノ本人が手がけたのは初期の数点のみで、後のバージョンは工房の弟子たちによる模倣が大部分を占めると考えられています。巨匠のブランドを利用した、当時の工房ビジネスの実態を物語っています。[1] 「ヴィーナス」と題されていますが、高価な宝石を身に纏う姿は当時の高級娼婦(コルティジャーナ)を暗示しています。現代の服を着た奏者は、彼女を買い上げた「客」としての側面も持っていると考えられています。[1] これらの作品は高尚な哲学書というよりも、寝室を飾るための「装飾家具」としての役割が強かったと推測されています。そのため、注文に応じて工房で大量のレプリカが制作されるスキャンダラスな商品でもありました。[1]