中央で裸体に近い姿で座る「歴史」は、人類の歩みを記録することで人々を「不死」にする役割を担っており、過去を振り返るような視線で描かれています。[1] 伝統的な寓意画では「歴史」は「時間」の背中を机にしますが、ゴヤは「時間」が女性の腕を掴んで未来へ引き上げる姿を描き、伝統を打ち破る独自の解釈を示しました。[1] 白い服の女性が持つ「笏(しゃく)」と「本」は、彼女が「真理」だけでなく、知恵を象徴する「哲学」や、国家の根幹たる「法」であることを示唆しています。[1]
スペインの宮殿のために描かれた可能性のある本作は、その後シカゴの個人邸宅やニューヨークの画廊を経て、1961年にスウェーデン国立美術館に収蔵されました。[1] 初期の下絵にはゴヤ特有の不気味なコウモリやミミズクが描かれていましたが、完成作ではそれらが排除され、より明るく公的な記念碑としての性格が強まりました。[1] 作品名は「真理、時間、歴史」のほか「1812年憲法の寓意」とも呼ばれ、描かれた女性が「真理」か「スペイン」か「法」か、今なお専門家の間で議論が続いています。[1] 「時間」が持つ砂時計は、ナポレオン軍の侵攻が迫るスペインの切迫した状況や、あるいは新しい憲法による新時代の幕開けを象徴していると考えられています。[1] この作品の構想は、ゴヤの辛辣な社会風刺版画集『ロス・カプリーチョス』のための素描から発展した可能性があり、風刺と公的な寓意が表裏一体となっています。[1] スペインの最高権力者マヌエル・ゴドイの宮殿を飾るために注文された可能性があり、当時の政治的野心や権力闘争の象徴としての側面を持っています。[1]
制作時期には1797年から1812年まで約15年の開きがあり、啓蒙主義の時代に描かれたのか、戦争と憲法の時代に描かれたのかで作品の意味が劇的に変わります。[1]