描かれているもの
聖バルトロマイが持つ「剥ぎ取られた自身の皮」の顔は、ミケランジェロの自画像です。自身の苦悩や罪深さを、無惨な姿に投影したと言われています。[1] 聖書の場面でありながら、ダンテの『神曲』の影響を強く受けています。地獄の渡し守カロンや審判官ミノスなど、異教の神話が混在しています。[1] 中央のキリストは伝統的な髭のある姿ではなく、古代彫刻のアポロンやヘラクレスを彷彿とさせる、若々しく筋肉質な姿で描かれています。[1] 片目を手で覆い、絶望に凍りつく「地獄に落ちる男」。自分が救われないと悟った瞬間の心理的な恐怖を、ミケランジェロは鮮烈に描き出しました。[1] 聖母マリアはキリストの隣で顔を背けています。これは、もはや慈悲を乞う段階は過ぎ、審判の結果を受け入れるしかないという諦念を表しています。[1] 聖ペテロは天国の鍵をキリストに返そうとしています。これは審判が下された今、もはや天国の門番としての役割が不要になったことを示唆しています。[1]
技法と様式
長年、煤で汚れて暗い印象でしたが、1990年代の修復で鮮やかな青やオレンジが復活。ミケランジェロが色彩の大家でもあったことが証明されました。[1] 本作に登場する天使たちには翼がありません。ミケランジェロは超自然的な装飾を排し、肉体の動きと力強さだけで神聖さを表現しようとしました。[1]
背景と物語
地獄の審判官ミノスの顔は、作品を「公衆浴場にふさわしい」と酷評した儀典長ビアージョの顔。復讐として、蛇に局部を噛まれる姿で描かれました。[1] 天井画の完成から25年後、60代になったミケランジェロが4年をかけて制作。老境に入った彼の死生観と、宗教改革期の不穏な空気が反映されています。[1] 当初、300体以上の登場人物はほぼ全員全裸でした。死後の世界に服はないという信念でしたが、後に「ふしだら」とされ、腰布が描き足されました。[1] 通常「最後の審判」は教会の出口に描かれますが、本作は祭壇の背後に配置。ミサの間、常に審判の恐怖を突きつける異例の構成です。[1]