The Gate of Calais
William Hogarthこの作品について
描かれているもの
画面左端にはスケッチをするホガース自身の姿が描かれています。その背後からは彼を逮捕しようとする兵士の手と武器が忍び寄っており、まさに拘束される直前の緊迫した瞬間を自虐的に表現しています。[1] 画面中央の巨大な牛の腰肉はイギリスの繁栄の象徴です。対照的に、それを取り囲むフランス兵たちは飢えて痩せこけ、水っぽいスープしか与えられない哀れな姿として、悪意を込めて描かれています。[1] 隅でうなだれる男は、1745年の反乱に失敗しフランスへ亡命したスコットランドのジャコバイト兵です。かつての勇者は見る影もなく、生の玉ねぎとパンの耳という粗末な食事で命を繋ぐ姿として描かれました。[1] 本作は宗教的な「聖体拝領」のパロディでもあります。人々はキリストの体ではなく、運ばれてくる牛肉を神聖なものとして崇めており、フランスのカトリック信仰と食生活を同時に揶揄する二重の皮肉となっています。[1] 舞台となったカレーの門には、1558年までイギリス領だった名残でイギリス王室の紋章が刻まれていました。ホガースはあえてこの場所を選び、フランスの中にある「イギリスの痕跡」を強調して描いています。[1]
背景と物語
ホガースはフランスのカレーで要塞をスケッチ中にスパイ容疑で逮捕されました。この屈辱的な体験が本作制作の直接の動機となり、フランスへの強烈な皮肉と敵対心が込められることになりました。[1] 本作は、長年敵対していた英仏が一時的な休戦状態にあった1748年に制作されました。平和な時期の旅行であったにもかかわらず、ホガースは逮捕されたことで、フランスへの敵対心をさらに燃え上がらせました。[1] 副題の「古き良きイングランドのローストビーフ」は、当時の愛国的な流行歌から取られました。フランスの貧しさとイギリスの豊かさを対比させ、自国の優越性を強調するプロパガンダ的な側面を持っています。[1] 牛肉の脂身に卑しく指を突っ込む太った修道士は、ホガースの友人である彫刻家ジョン・パインがモデルです。友人をあえて強欲な聖職者として描くという、ホガースらしい毒のあるユーモアが発揮されています。[1] 門の上に描かれたカラスは、完成直後にキャンバスが釘に当たって破れた跡を隠すために描き加えられたと言い伝えられています。しかし、1966年の修復調査では、その場所に損傷の跡は見つかりませんでした。[1]