

The Dream of Belinda
Henry Fuseliこの作品について
描かれているもの
画面を横切る精霊ウンブリエルが手にするのは「コタニワタリ」の枝です。これは英雄アイネイアスの「黄金の枝」のパロディであり、当時英国病と呼ばれた「脾臓(憂鬱)」の世界への下降を意味します。[1] 鏡台に置かれた「ひび割れた鏡」は、ヒロインの美徳の脆さを象徴しています。これは彼女が夢の中で「インクブス(夢魔)」の犠牲者となることを暗示する、フセリ特有の不穏な演出です。[1] 本作は長年『マブ女王』という別名で呼ばれ、主題が誤解されていました。1973年になってようやく、アレクサンダー・ポープの詩に基づいた『ベリンダの目覚め』という本来の主題が特定されました。[1] ヒロインの足元でシーツを被り潜む男は、彼女の髪を切り取ろうと狙う男爵です。そのシーツの上で交尾する2匹の蛾は、これから起こる出来事の性的なメタファーとして描かれています。[1] 眠れるベリンダのポーズは、フセリが心酔したミケランジェロの彫刻『夜』や、古代の『眠れるアリアドネ』をモデルにしています。古典的な美しさと、夢の中の無防備な官能性が融合されています。[1] 画面右下には、シェイクスピア劇に登場するマブ女王の「善」と「悪」の両面を象徴する二人の小さな女性が描かれています。詩の枠を超え、フセリ独自の神話体系が複雑に絡み合っています。[1]
背景と物語
フセリは18世紀の英国詩を「退屈な単調さ」と酷評していましたが、本作の題材であるポープの『髪盗み』だけは唯一の「詩的天才の証」として例外的に高く評価し、創作のインスピレーションとしました。[1] 本作はフセリの代表作『夢魔』と対をなす作品と考えられています。主題や様式、サイズがほぼ同じであり、夢の世界と現実の境界線、そして女性を襲う官能的な恐怖という共通のテーマを追求しています。[1] 本作はかつての修復時に上下左右が切り詰められたため、対となる『夢魔』よりもわずかに小さくなっています。また、四隅が黒く塗られていることから、元々は円形の装飾枠にはめられていた可能性があります。[1] ウンブリエルの足元に描かれた巨大な鱗粉を持つ虫は、フセリの故郷スイスの伝承に登場する夢魔「トッゲリ」を連想させます。英国文学の挿絵でありながら、画家の内面にある暗い幻想が反映されています。[1]