

Sigismunda mourning over the Heart of Guiscardo
William Hogarthこの作品について
描かれているもの
画面中央の黄金の杯には、彼女の父によって殺害された夫の「本物の心臓」が入っています。このあまりに生々しくグロテスクな描写が、当時の観客に衝撃と嫌悪感を与えました。[1] 悲劇のヒロイン、シギスムンダのモデルは、ホガース自身の妻ジェーンであったと考えられています。最愛の妻を、夫の心臓を手に嘆き悲しむ姿として描き出しました。[1] 豪華なテーブルの脚には、パグのような鼻を持つ人物が彫り込まれています。これはホガースの自画像に酷似しており、自分を作品に挿入することで旧巨匠との繋がりを誇示しようとした仕掛けです。[1]
技法と様式
批判を和らげるため、ホガースはシギスムンダの指を塗り直し、当初描かれていた生々しい血痕を隠しました。現在でも肉眼やX線で、その修正の痕跡(ペティメント)を確認できます。[1]
背景と物語
ホガースが「歴史画家」としての名声を確立しようとした最後にして最大の野心作でしたが、当時の批評家からは「これ以上ないほどの酷評」を浴びるという皮肉な結果に終わりました。[1] 1761年の展覧会で激しい嘲笑を浴びたホガースは、わずか10日間でこの自信作を展示から引き揚げ、代わりに自身の風刺画シリーズの作品に差し替えるという屈辱を味わいました。[1] ホガースは死の間際に妻へ「500ポンド以下では決して売らないように」と言い残しました。しかし彼女の死後、競売での落札価格はわずか56ギニー(約59ポンド)まで暴落しました。[1] 競売で高値がついた「コレッジョ作」とされる絵画に対抗し、自分も旧巨匠に匹敵することを証明するため、あえて同じ405ポンド5シリングという当時の破格の価格を設定しました。[1] 依頼主のグローヴナー卿は完成作の受け取りを拒否。「これほど真に迫った悲劇を常に目にすると、憂鬱な気分になりすぎる」という皮肉めいた言い訳で契約を破棄しました。[1] 著名な批評家ホレス・ウォルポールは、この作品を「だらしなく落ちぶれた女」のようだと酷評。ホガースが意図した高潔な悲劇性は、批評家たちの目には滑稽なものにしか映りませんでした。[1]