

聖女プラクセディスが、殉教者の血をスポンジで絞り、器に集めるという衝撃的な場面を描いています。静謐な室内画で知られる後のフェルメールとは対照的な主題です。[1] 模写元の作品には存在しない「十字架」を、フェルメールは聖女の手に持たせる形で描き加えました。これは彼独自の宗教的解釈や意図が反映された重要な変更点です。[1]
フェルメールが生涯で残した作品の中で、他人の作品を忠実に模写したことが判明している唯一の例です。イタリアの画家フィキレッリの作品をモデルにしています。[1] 科学調査により、この絵に使われた鉛白が、フェルメールの初期の真作『ディアナと仲間たち』と一致することが判明し、真作認定の決定打の一つとなりました。[1] 画面には2つの署名があり、その一つには「リポーゾ(フィキレッリの愛称)に倣って」という意味の言葉が添えられている可能性があり、研究者の間で議論を呼びました。[1] 初期作品としては異例なほど、高価なラピスラズリを原料とする「ウルトラマリン」が多用されています。これは後のフェルメール作品を象徴する特徴の先駆けと言えます。[1]
2014年の競売では約11億円で落札されましたが、当時は真作かどうかの疑念が拭いきれなかったため、フェルメール作品としては異例の「安値」と見なされました。[1] 2015年以降、東京の国立西洋美術館に常設展示されています。世界に30数点しかないフェルメール作品を、日本で日常的に鑑賞できる極めて貴重な機会となっています。[1] 1943年にニューヨークの小さなオークションハウスで、コレクターのジェイコブ・リーダーによって発見されるまで、その来歴は全くの謎に包まれていました。[1] 長年フェルメール作か疑われてきましたが、2023年のアムステルダム国立美術館での展覧会を機に、ようやく真作として「格上げ」され、公式に認められることになりました。[1] フェルメールがカトリックに改宗した時期と重なっており、この珍しいカトリックの聖女という主題を選んだ背景には、彼自身の信仰の変化が影響していると考えられています。[1]
フェルメールの全作品の中で、制作年(1655年)がはっきりと記されているわずか4点のうちの1つであり、彼の初期の画風を知る上で極めて重要な基準作です。[1]
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