聖ヒエロニムスが自らの胸を石で打ち据えて悔い改める、生々しい修行の場面を描いています。未完成ゆえに、画家の筆致がダイレクトに伝わります。[1] 聖人の足元に横たわるライオンは、足に刺さった棘を抜いてもらった恩返しに忠実な伴侶となった伝説を象徴し、聖人の伝統的な属性となっています。[1] 聖人の体は斬新な「斜めの台形」を構成し、足元のライオンは優美な「S字」を描いています。この対照的な構図は、静寂の中の力強さを表現しています。[1]
強欲な画商によって5つに切断されました。最も完成度の高い「頭部」だけを切り離して高値で売ろうとした、衝撃的なヴァンダリズムの犠牲となったのです。[1] この作品には、レオナルドによる最初期の解剖学的素描が見られます。特に首や肩の筋肉の描写は、後の科学的な人体研究の先駆けとなりました。[1] この作品で見られる聖ヒエロニムスのポーズや身体表現は、後に描かれる傑作『岩窟の聖母』における聖母マリアの造形の原型になったと考えられています。[1]
数々の数奇な運命を辿った末、この傑作は教皇ピウス9世によって買い取られ、現在はヴァチカン美術館の至宝として大切に保管されています。[1] ナポレオンの叔父フェッシュ枢機卿は、まず頭部を購入し、数年後に偶然立ち寄った店で「頭の部分に穴が開いた板」を見つけ、奇跡的に再会させました。[1] 伝説では、切断された胴体部分は「テーブルの天板」として、頭部は「靴職人の作業台のくさび」として使われていたところを発見されたと言われています。[1] 1476年に同性愛の罪で告発されたレオナルドが、その精神的な苦痛や悔恨の念を、荒野で悔い改める聖ヒエロニムスの姿に投影したという説があります。[1]