

ゴッホはアイリスを日本の象徴と考え、南仏の風景の中に、彼が憧れた理想郷「日本」の面影を重ね合わせて描きました。[1] 地面に座り込むか膝をついて描いたような独特の視点は、伝統的な風景画の枠を超え、植物の生命力に迫る迫力を生んでいます。[1] 伝統的な風景画の遠近法はなく、静物画のように切り取られてもいない。大地に根を張り「動く生命」を描いた異色の作品です。[1]
現在は青く見えるアイリスですが、科学分析により、元々は赤い絵具を混ぜた鮮やかな「紫色」だったことが判明しています。[1] 絵画の表面には、サン=レミの療養所の庭に生えていたカサマツの花粉の塊が、当時の絵具の中にそのまま閉じ込められています。[1] 黄色の背景に紫の花を置くなど、色彩理論に基づき補色を隣り合わせることで、それぞれの色が最も鮮やかに輝くよう計算されています。[1]
精神病院への入院直後に描かれた本作。ゴッホは描くことが回復に繋がると信じ、「仕事の能力がすぐに戻るだろう」と希望を語っています。[1] ゴッホ自身はこの作品を完成品ではなく「習作(スタディ)」と考えており、事前の素描も残さず一気にキャンバスへ向かいました。[1] 療養所での生活の中、弟テオの手でアンデパンダン展に出品され、遠くからでも目を引く「命に満ちた作品」と評されました。[1]
1輪だけ咲く別の作品との比較から、この満開のアイリスは、入院からわずか10日ほどの間に一気に描き上げられたと推測されます。[1]