画面右側に描かれた大きなカーテンは、当時、高価な絵画を埃や日光から守るために本物のカーテンを掛けていた習慣を、絵の中に再現したメタ的な演出です。[1] ボウルからこぼれ落ちそうな果物や、半分に割れた桃は、当時の象徴主義において「婚外恋愛」や「不謹慎な関係」を暗示していると考えられています。[1]
背景の壁は長年空白だと思われていましたが、2021年の修復で、後世に塗り潰されていた「キューピッドの絵」が約300年ぶりに姿を現しました。[1] 2018年からの修復では、顕微鏡を覗きながらメスを使って、18世紀に上塗りされた絵具を1層ずつ慎重に削り取るという驚異的な職人技が駆使されました。[1] フェルメール特有の「ポワンティエ(点描)」技法が確認できる最初期の作品で、光の反射を表現するために、髪や果物に小さな白い粒のような絵具が置かれています。[1] 窓ガラスに映る少女の反射や極めて写実的な光の描写から、フェルメールが「カメラ・オブスクラ」という光学装置を用いて描いたという説が有力視されています。[1]
第二次世界大戦末期、ソ連軍によって略奪同然に持ち去られましたが、スターリンの死後、友好の証として1955年にドイツへ返還された数奇な運命を持ちます。[1] 長らくレンブラントやピーテル・デ・ホーホの作品だと誤認されており、フェルメールの真作と特定されたのは制作から200年以上経った1880年のことでした。[1] 壁に隠されていたキューピッドの絵は、少女が読んでいるのが単なる手紙ではなく「恋文」であることを決定づけ、作品の意味を劇的に塗り替えました。[1] ソ連からの返還時、ソ連側は「救出の謝礼」としてこの作品を譲渡するよう要求しましたが、ドイツ側がこれを拒否したため無事にドレスデンに戻りました。[1]