

Diptych of Philip de Croÿ with The Virgin and Child
Rogier van der Weydenこの作品について
描かれているもの
聖母は黄金の背景に、貴族は暗い背景に描かれています。この対比は、祈りを捧げる貴族の目の前に、聖母が神々しい「幻影」として現れた瞬間をドラマチックに演出しています。[1] 幼いキリストは、隣のパネルにいるフィリップの方へ手を伸ばしています。この仕草は、神の世界と人間の世界を繋ぐ架け橋であり、絵の前に立つ鑑賞者をも聖なる世界へ誘う仕掛けです。[1]
技法と様式
長年、背景は単なる黒一色だと思われてきました。しかし近年の修復により、銀箔の上に緑の釉薬を重ねた贅沢な装飾と、持ち主を示す謎のモノグラムが隠されていたことが判明しました。[1] 寄進者の肖像と聖母を並べる「二連祭壇画」の形式を確立したのは、この画家ファン・デル・ウェイデンです。このスタイルはその後100年以上にわたり、ヨーロッパ中で模倣されました。[1]
背景と物語
かつて一体だった二枚の絵は、いつの間にか切り離されました。現在はベルギーのアントワープとアメリカのカリフォルニア、大西洋を挟んで遠く離れた二つの美術館に別々に所蔵されています。[1] 当時、天国へ行く前の「煉獄」での苦しみを減らすため、宗教画を寄進することが流行しました。この作品は、自らの祈る姿を聖母に捧げることで死後の救済を願った、切実な「投資」でもあったのです。[1] 画家はモデルの欠点を隠す「加工」を施しました。実際には大きな鼻と突き出た顎を持っていたフィリップを、あえて理想的な貴公子の姿として描き、依頼主の自尊心を満たしたのです。[1] 幼いキリストが手にしているのは、豪華な装丁の祈祷書です。これは、当時屈指の愛書家として知られた依頼主フィリップへの、画家による心憎いまでの「お世辞」として描き込まれました。[1]
制作
制作年代を特定する鍵は、モデルの「髪型」にありました。耳の上を刈り上げ、前髪を揃えたこの独特なスタイルは、1460年頃のブルゴーニュ貴族の間で大流行した最先端のファッションでした。[1]