聖書の記述では当時80歳を超えていたはずのダニエルですが、ルーベンスはあえて彼を若々しい青年の姿で描き出しました。[1] 数頭のライオンは鑑賞者を真っ直ぐに見つめており、まるで自分自身がライオンの巣穴に侵入してしまったかのような恐怖を抱かせます。[1] 描かれたライオンは、当時すでに野生では絶滅していたとされるモロッコ産の亜種である可能性が指摘されています。[1] 画面に描かれた10頭のライオンは、当時の南ネーデルラントにおける10の州を象徴する政治的な暗喩であるという説があります。[1]
ルーベンスは、ライオンの表情を研究するために、檻の中のライオンをくすぐって口を開けさせたという驚きのエピソードが残っています。[1] ダニエルの苦悶と希望が混ざった表情は、ルーベンスがイタリアで見た古代彫刻「瀕死のアレクサンドロス」の影響を受けています。[1]
ルーベンスはこの名作を含む絵画群を、古代彫刻のコレクションと交換で譲渡しましたが、本人は「損をした」と漏らしていました。[1] 宮廷画家だったルーベンスは、大公が所有する王立動物園に自由に出入りでき、本物のライオンを間近で観察することができました。[1] イギリス国王チャールズ1世は、王権の象徴としてこの作品をホワイトホール宮殿の「ベア・ギャラリー(熊の回廊)」に飾っていました。[1]
ルーベンスは外交官に売却する際、一度手放したこの絵を「買い戻した」と語っており、初期の所有者については謎が残っています。[1]