

Charles de Solier, Sieur de Morette
Hans Holbein the Youngerこの作品について
描かれているもの
黒いサテンの衣服にあしらわれた金のボタンには、彼の称号である「モレット(Morette)」を象徴する「M」の文字が二つ刻まれており、ホルバインの細部への執拗なこだわりが光ります。[1] 長年、モデルは金細工師の「ユベール・モレット」だと誤解されていました。1881年になってようやく、フランスの外交官シャルル・ド・ソリエであることが研究によって突き止められました。[1] 帽子には洗礼者ヨハネの金バッジがあり、「御心を行わせたまえ」という銘文が刻まれています。大英博物館には、ホルバイン自身が描いたこのバッジの設計図が今も保管されています。[1] 背景には海緑色のダマスク織のカーテンが描かれ、等身大で描かれた人物の圧倒的な存在感を引き立てています。シンプルながらも計算し尽くされた、ホルバイン最高傑作の一つです。[1] この肖像画の堂々たる威厳に満ちた構図は、ホルバインが後に手掛けることになる、あの有名なヘンリー8世の象徴的な肖像画シリーズのプロトタイプ(原型)になったと考えられています。[1]
技法と様式
左手のポーズや、半分隠れたメダリオンの配置は、ティツィアーノの名作「手袋を持つ男」を彷彿とさせます。北方ルネサンスの巨匠がイタリア美術を意識していた興味深い証拠です。[1]
背景と物語
1903年に発見された小さなツゲ材のメダル模型が、モデル特定の決定打となりました。そこには彼の名前と称号、そして50歳という年齢がはっきりと刻まれていたのです。[1] 1746年、この作品はレオナルド・ダ・ヴィンチ作の「ミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァの肖像」として売却されました。作者もモデルも完全に忘れ去られていた、驚きの空白期間が存在します。[1] 17世紀、高名な収集家アランデル伯爵はこの絵を熱望し、購入を試みましたが失敗に終わりました。もし彼が購入に成功していたら、この絵の運命は全く異なるものになっていたでしょう。[1] 腰に下げた短剣の鞘と大きな房飾りは、ホルバインの別の傑作「大使たち」に描かれた人物の装飾品と酷似しており、当時の外交官たちの共通のステータスシンボルであったことが伺えます。[1]