Calumny of Apelles
Sandro Botticelliこの作品について
描かれているもの
古代ギリシャの画家アペレスが「無実の罪で処刑されかけた」際に描いたという伝説の失われた名画を、文献のみを頼りに現代に蘇らせた野心作です。[1] 玉座に座る王には「ミダス王」のようなロバの耳が生えており、その両脇から「無知」と「疑念」が囁きかけ、真実を遮る愚かさを象徴的に表現しています。[1] 画面左端で天を指差す全裸の「真実」は、ボッティチェッリの代表作『ヴィーナスの誕生』の女神と全く同じポーズで描かれており、自身の過去作を引用しています。[1] 遠近法の消失点が複数存在し、建築のラインが意図的に歪められています。この「論理的でない空間」が、見る者に言いようのない圧迫感と不安を与えます。[1] 誹謗に髪を掴まれ引きずられる犠牲者は、足首を交差させており、キリストの磔刑を思わせるポーズをとることで、無実の苦しみを宗教的な次元で強調しています。[1]
背景と物語
縦62cm、横91cmというサイズは、彼の巨大な神話画に比べると驚くほど小ぶりですが、その中には9人の人物と無数の彫刻が緻密に描き込まれています。[1] 本作はボッティチェッリが描いた最後の世俗画であり、誰の注文でもなく自分自身のために描かれた可能性が高い、極めて個人的な情熱が込められた作品です。[1] この絵を譲り受けた銀行家アントニオ・セーニャ・グイディは、後に教皇庁の造幣局長を務めるも、最後は拷問台にかけられるという悲劇的な最期を遂げました。[1] 制作から数年後、ボッティチェッリ自身が「男色」の罪で匿名告発されており、この「誹謗」というテーマは彼自身の切実な恐怖を反映しているという説があります。[1] 黒い服を纏った「悔悟」の姿は、当時処刑された修道士サヴォナローラのドミニコ会装束に似ており、彼を擁護する意図があったとも推測されます。[1]