

酒神バッカスが戦車から飛び降りる瞬間を捉えた大胆な構図が特徴です。この「空中の静止」とも言える表現は、一目惚れしたアリアドネへの激しい情熱を劇的に演出しています。[1] アリアドネの頭上に輝く「かんむり座」は、彼女の未来を暗示しています。バッカスは彼女を天に上げ、その冠を星座に変えて永遠の命を与えたという神話の結末が描かれています。[1] 蛇を体に巻き付けたサテュロスの姿は、当時ローマで発掘されたばかりの古代彫刻「ラオコーン像」から着想を得ています。ティツィアーノは最新の考古学的発見を即座に作品に取り入れました。[1] 戦車を引く2頭のチーターは、パトロンであるフェラーラ公の私設動物園にいた実物をモデルにしたと考えられています。古代の詩では虎とされていましたが、現実の動物を優先しました。[1] 画面の隅で吠えているキング・チャールズ・スパニエルは、ティツィアーノの作品によく登場するモチーフです。これはパトロンである公爵が実際に飼っていた愛犬だと推測されています。[1] 画家の署名が刻まれた金の壺は、公爵のコレクションにあった実物の古代遺物をモデルにした可能性があります。署名を単なる文字ではなく、物語を彩る調度品の一部として配置しました。[1]
画面を斜めに分割する色彩構成が取られています。空には当時金よりも高価だったラピスラズリ由来の「ウルトラマリン」が贅沢に使われ、地上の茶や緑の喧騒と鮮やかな対比をなしています。[1]