聖母マリアは上方ではなく、鑑賞者の方へ「飛び出してくる」ように描かれています。狭い礼拝堂の視覚的制限を逆手に取った驚きの演出です。[1] 聖母が昇天した後の空の棺には、奇跡の証としてバラの花と埋葬布が残されており、右側の使徒がそれを驚きとともに見つめています。[1]
画面中央の聖母、左のペテロ、右のパウロは、赤・青・黄・緑といった鮮やかな原色の衣装をまとい、強烈な色彩の対比を生んでいます。[1] 狭い画面に11人もの使徒がひしめき合う構図は、古典的な調和をあえて崩した「ハイパー・アイデアル(超理想主義)」への転換点とされます。[1] ラファエロの傑作『キリストの変容』をモデルにしており、特に聖ペテロの彫刻的な造形にはその強い影響が見て取れます。[1]
カラヴァッジョの劇的な明暗法に対し、カッラッチは均一な光と調和を選びました。この対照的なスタイルが、同じ礼拝堂内で火花を散らしています。[1] 同じ礼拝堂にあるカラヴァッジョの傑作の影に隠れがちですが、バロックの二大巨匠が同じ空間で競演した稀有な場所として知られています。[1] 当時、カッラッチはファルネーゼ宮殿の仕事で多忙を極めていたため、礼拝堂の天井画は弟子のインノチェンツォ・タッコーニに任せていました。[1] カラヴァッジョが描いた聖ペテロと聖パウロの物語と連動するように、カッラッチも手前にこの二人の使徒を配置し、空間全体で物語を完結させています。[1] 17世紀の伝記作家たちからは酷評、あるいは無視されていました。現代になってようやく、そのダイナミックな神聖さが再評価された「逆転」の作品です。[1]